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受益者連続型信託以外の信託を複層化した場合の評価(5)
- 2017年06月14日
- では,現行法の特徴を確認していく。
初めに複利現価による方法について解説する。この方法は,特許権や商標権のように,その権利によって何年間か収入が続き,やがて消滅してしまう権利の評価に用いられる。特許権のような権利の場合は,毎年の収入や利益の額が必ずしも一定しないことから,可能な限りこれを年ごとに推定し,それぞれについて複利現価の額を算出し,その合計額をもって権利の評価額としている。実際の評価では,複利現価表にある現価率を用いるが,複利現価表とは,割引率と年数が与えられたときの1円の現在価値を計算した一覧表である。
次に割引現在価値について解説する。これは一般に将来に受け取るべき金額を一定の割引率を用いて現在の価値に還元したものをいう。ある資産の現在価値は,その利用に伴い将来にもたらすであろう各期間の純収入額を,正常な利子率で割り引いて現在の価値に還元した金額の合計である。いま,ある資産の現在価値をV,毎期の純収入額をC1,C2,...Cn,利子率をiとすると,現在価値は次の算式で計算される。
管理会計等で投資の経済性計算のためにDCF法を用いることが多いが,そこで現在価値を計算する。DCF法を用いる場合には,①将来の一定時点で支払われる金額,②利率(割引率),③利子を元本に組み入れる間隔の3つの要素を知ることが必要である。
期間3年,収入総額30万円(1年ごとに10万円ずつ後受け),割引率5%という条件の収入金額の場合,現在価値を求める式は,次のようになる。
PV(Present Value)= 現在価値,FV(Future Value)= 将来キャッシュフロー(CF),k = 年間割引率(年利),i = 元本組入回数,n = iの総数
よって,上記の例における現在価値(PV)は
となる。
最後に,各年毎の「将来受けるべき利益の価額」 について解説する。税引前利益をいうのか,税引後利益をいうのかで大きな差が生じる。最近の資産評価の実務では,税引後利益に減価償却費を加算してキャッシュフローベースで「収益」価額を算定することが多いことを踏まえると,この将来の収益受益権の評価についても,キャッシュフローベースで「税引後利益に減価償却費を加算した金額」を計算するのが相当と考える。
なお,信託受益権の評価の困難性について,課税論と評価論の境界線の曖昧さから生じているのではという指摘があることを付言しておく 。