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信託税制下での複層化の本質について(4)
- 2017年06月22日
- 実質説の場合,説明は非常に困難である。というのは,実質説の要件は「第一に,信託財産の元本の移転を伴う場合」であって「第二に,収益受益権のみを受益権の内容とする場合」という経済的効果が完全所有権を移転していることを前提とした非常に特定化された売買と同様の状況のみしか想定していないからである。
一方,擬制説ではそもそも信託財産の持分の一部の譲渡を各々が取得することと同義であるため優先・劣後収益受益権や負担付資産の移転についても各々がそれぞれの適正対価に従って取得することで問題点を解消できる。
また,元本受益者保護の観点からも擬制説のほうが説明しやすい。信託受益権を複層化した上で配慮されなければならない事実は,財産評価基本通達202項に基づく収益受益権の評価方法では,その基礎となる将来収益の合理的な評価(同通達では「推算」と表現している)と現実との乖離が生じる可能性は多分にあり,その乖離の程度によっては元本受益者と収益受益者との間で争いが生じる可能性があるという点であることである。元本を維持する義務も課されていることから考えると,将来の持分移転(上記でいうところの将来の受益者間のリスク負担)を斟酌せねばならず,複層化の経済的本質は擬制説に立つのが望ましいと思慮する。
さらに「平成19年度改正税法のすべて」によれば,「各受益者等に質的に均等に帰属することまでを定めたものではなく,例えばある受益者は信託財産に属する土地の底地権を有し,他の受益者は当該土地の借地権を有するものとみなされる場合もあるといったように,信託行為の実態に応じて,帰属を判定するものと考えられます。この判定については,仮に信託がないものとした場合に同様の権利関係を作り出そうとすればどのような権利関係となるかが参考になると考えられます。 」とあり擬制説を前提としている記述が見受けられる