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現行財産評価基本通達202項改正前(旧法)において困難と考えられた評価方法(2)
- 2017年07月02日
- 佐藤教授の指摘は,事例を4つに分けて紹介されたものだが,ここでは,全く評価が不能であり,旧現行財産評価基本通達202項においても評価の特定が困難であると考えられた事例を取り上げる。
「○評価が不可能な場合
【例4】委託者Uは自己の所有する金銭を信託財産として信託を設定した。信託の収益の受益者は子X,Y,Zである。その受益権の内容は(イ)3人及びその配偶者が事故・病気のために入院した場合にはその費用相当額を信託から分配する。(ロ)(イ)による分配をしても残る信託収益がある場合には,3人に対して,その年分の所得が1000万円に満たない場合に,その満たない分を信託から分配する。
将来の受益者の具体的事情等に応じて柔軟に対応しうるのが信託の特性であるが,この【例4】のような信託が設定された場合,その設定時にX,Y,Zの受益権の価額を統計的な資料を基礎として評価することは極めて困難である。
このように具体的な受益権の評価が統計的に不可能である場合には,複雑な擬制を重ねるよりもこの3人が信託元本の信託期間中の収益力を3等分して受けたと考えるのが最も簡明であり,やむを得ない課税方法ではないかと考えられる。」
確かに佐藤教授の指摘の通り,上記事例では,3等分するのが最も合理的であることは否定できない。複雑な擬制を重なることも可能であることも1つの方法として考えられるが,ここでは権利関係を明らかにすることの方が重要であると考えられる。例えば不動産を信託財産としたときは収益受益者に帰属する経済的利益は全ての経費相当分を差し引いたキャッシュフローとなるが,上記の【例4】でいうところでは全ての諸経費を差し引いて計算した後の残額を三等分するという極めて単純な方法である。
さらに実務的に処理しようとすれば,信託の目的の変更,受益権の譲渡の制限等,当初信託契約から受益者に重大な影響を与える事実が存するに至る場合には,信託法103条より受益権取得請求権を行使することも可能であるので,これを行使すればよいだけということにもなりうる。