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受益者連続型信託以外の信託を複層化した場合の評価(3)
- 2017年06月12日
- 以上見てきたように,信託法上では,受益者間の又は受益者と受託者の関係性における議論が中心を占め,複層化の定義規定を考える上ではそれほど参考にならないと思慮する。
例えば,鯖田豊則氏によれば「受益権には,狭義の受益権と広義の受益権があり,狭義の受益権は直接信託の利益を享受する権利,すなわち給付請求権であり,広義の受益権は,信託の利益を享受する権利に付随する権利である。給付請求権は元本受益権と収益受益権があり,(以下中略)」と指摘されている 。続けて投資信託受益証券,貸付信託法における貸付信託受益権,資産流動化法における特定目的信託の受益証券などの会計処理を例に挙げられているが,ここから垣間見ることができるのは,収益受益権と元本受益権の区分はあくまで金融商品組成の一手段であったという歴史的背景である。商事信託としてそういった金融商品が組成された場合,当然,会計処理が要求され,さらにそれに伴う租税法上の取扱いが要請される。すなわち,歴史的背景として信託法とは全く別に租税法上の取扱いが先行して実務では執行されてきたという既成の事実である。
信託税制上の受益権の複層化についてであるが,いわゆる「量的複層」でないものは全て「質的分割」とされているものと位置付ける考え方もあろうが,ここでは通達に従い元本受益権と収益受益権との単純な区分について本稿では詳細に扱う。ちなみに,この場合の「量的分割」と「質的分割」の違いであるが,量的分割は受益権者が複数いるもの,受益口の一口あたり価値がわかっているものであり,質的分割はそれ以外のものとし,本稿ではこの区分に従い,検討することとする。そして本稿はこの質的分割に関しての考察を加えたものである。