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アメリカ法における信託受益権の評価(7)
- 2017年07月22日
- アメリカのグランター・トラストと課税制度の内容について検討したとおりであるが,信託受益権の評価に関する規定は,同法典第2702 条に置かれている。アメリカ法における信託受益権の評価の具体例は脚注を参照されたい 。そこには,価値の移転があったとみなす範囲を限定した上で,遺産税ではなく贈与税として課税関係が構築されている。しかしながら,統一移転税制(Unified Transfer Tax System)により,統一移転税の税額計算は累積的に計算される。従って,生前贈与であれ,死亡時相続であれ税額的に大差は生じない。そのため,後述3.のような複層化することによる生前贈与対策にはインセンティブは働かないはずである。これを参照にした制度がわが国における相続時精算課税制度であるが,税率は20%である。また,生前贈与した場合の贈与税の税率テーブルと相続税の税率テーブルは異なっており,そのテーブル差を利用した租税回避のインセンティブ要因が高い。一方,アメリカ法では先述の通り,税率テーブルは一緒のため,そのようなインセンティブは低い。
このようにわが国とアメリカでは課税の仕組みが異なり,わが国の信託受益権の評価法の検討項目としては,参考にならないと思慮する。
なお,シアーズ規則については,同規則は信託課税ルールの範囲から除外される「信託」を決定するためのものであることであるからここでは言及しない 。
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